飲食店の内装工事にかかる費用相場とは? 坪単価の目安や工事の流れ、業者選びのポイントをわかりやすく解説

飲食店を開業する際には、「内装工事」がとても重要です。
料理のおいしさに加えて、店内の雰囲気もお客さまに選ばれるための大切なポイントになります。
この記事では、飲食店の内装工事について「費用相場」や「坪単価」「費用をおさえる工夫」などを、これから開業を目指す方にもわかりやすく解説しています。
内装で失敗しないためのポイントをまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
目次
飲食店の内装工事で大切なこと
飲食店の内装工事では、見た目のよさだけでなく、使いやすさや動線のスムーズさ、作業のしやすさといった実用性もとても重要です。
たとえば、厨房の動線が整理されていると、調理や配膳の動きがスムーズになります。スタッフの負担が減ることで、仕事の効率も上がるでしょう。
また、客席の配置や通路の幅なども、サービスのしやすさに影響します。照明や音響の工夫によって、店内の居心地も大きく変わってきます。
さらに最近では「SNS映え」するような内装が話題になりやすく、お店を知ってもらうきっかけになることも増えています。
見た目と使いやすさのバランスが取れた内装こそ、多くの人に長く愛される店舗づくりにつながると私たちは考えています。
飲食店の内装工事にかかる費用はどれくらい?

飲食店の内装工事では、一般的に「坪単価」という単位を使って費用を計算します。1坪は約3.3㎡の広さで、工事にかかる費用は店舗の広さやデザイン、設備の内容などによって変わってきます。
相場としては、1坪あたり約20万円から80万円の間であることが多いです。
とくに費用が高くなりやすいのは、次のような場合です。
■ 高級な素材を使うとき
■ 複雑なデザインや特別な工事があるとき
■ 厨房設備を充実させたいとき
■ 空調や換気設備を大がかりに設置するとき
一方で、デザインをシンプルにしたり、もともとある設備を活かしたりすることで、費用を抑えることも可能です。
また、物件の状態によっても工事費は大きく変わります。ここからは、物件の種類ごとに特徴と費用の目安を紹介していきます。
スケルトン物件

スケルトン物件とは、内装や設備がまったくない状態の物件を指します。壁や天井はコンクリートがむき出しになっていて、トイレや照明、厨房設備なども何も設置されていません。
このような空間は、間取りやデザインを一から自由に考えられるのが魅力です。
たとえば、「カフェと物販スペースを一緒にしたい」「厨房を広めに取りたい」「できるだけ短い動線で配膳したい」などの希望も、最初からプランに組み込むことができます。
坪単価の相場:約40万~80万円/坪
スケルトン物件は一からすべてをつくる必要があるため、費用は高めになりがちです。一般的な坪単価の目安は、約40万円から80万円ほどになります。
費用が高くなる主な理由は次の通りです。
■ 厨房や空調、給排水といった設備工事が必要になること
■ 内装の仕上げをすべて新しくつくる必要があること
■ デザインの自由度が高く、こだわるほど費用が増えること
居抜き物件

居抜き物件とは、前に営業していたお店の内装や設備が残ったままの物件のことです。たとえば、以前ラーメン店だった場所であれば、厨房やカウンター、照明、トイレなどがそのまま使えることがあります。
こうした物件では、もともとの設備を活かすことで工事費用を大きく抑えられる可能性があります。また、工事の期間が短くなるため、早く営業を始められるというメリットもあります。
坪単価の相場:約20万~50万円/坪
居抜き物件は、すでに設備や内装が整っている分、工事の手間を最小限にできるケースが多いです。坪単価はおおよそ20万円から50万円ほどで、以下のような点が費用を抑えるポイントになります。
■ 厨房や空調、給排水設備をそのまま使えること
■ 内装の一部を再利用できるため、工事の範囲が限られること
■ 工期が短くなり、早く開業できること
ただし、どのような料理やサービスを提供するかによって必要な設備が変わってくるため、業種によって費用が変動する点にも注意が必要です。たとえば、カフェとバー、レストランでは内装工事の内容が大きく異なる場合があります。
工事費用の内訳を詳しく知ろう

坪単価にはいろいろな工事項目が含まれていますが、何が含まれているか、何が別料金になるかは業者によって少しずつ異なります。
ここでは、内装工事にかかる主な費用を項目ごとに詳しく見ていきましょう。
設計・デザイン費
内装工事費のうち、設計やデザインにかかる費用は全体の5〜15%が目安とされています。
この中には、店舗のコンセプト作り、レイアウト設計、素材や色の選定、デザインの提案などが含まれます。
プロのデザイナーに依頼すれば、使いやすさと見た目の両方を考えた魅力的なお店がつくれますが、当然その分費用も上がりやすくなります。
予算に応じて、デザインの範囲や回数(提案や修正の回数)を調整すれば、コストをおさえることもできるでしょう。
注意ポイント
この設計・デザイン費は坪単価に含まれていないケースもあります。
設計事務所に別で依頼する場合は、見積もりの中で「別枠」として計上されることが多いため、契約前にどこまで含まれているかを必ず確認しましょう。
施工費(内装・設備)
施工費は、内装工事の中でも大きな割合を占める項目です。
床・壁・天井の仕上げ、電気やガス、水道といった基本的な設備、厨房機器の設置、空調や換気などの設備もここに含まれます。
店舗の広さや設備のグレードによって金額は変わりますが、施工費は全体の60〜70%ほどになることが多いです。
防音や防火など、特別な仕様が必要な場合はさらに費用がかかることもあります。
注意ポイント
施工費は基本的に坪単価に含まれていますが、厨房機器の本体価格や電気容量の追加工事などは別に計上されることがあります。
見積もりの内容を確認して、どこまでが含まれているのかをはっきりさせておきましょう。
家具・什器・照明などの購入費
内装工事とは別に、お店で使う家具や什器(商品棚など)、照明などの費用も必要になります。この部分は選ぶ製品によって金額に差が出やすく、費用の調整がしやすい項目といえるでしょう。
高級な家具やオーダーメイドの什器を使えば見た目は良くなりますが、当然コストも高くなります。一方で、中古品や既製品をうまく使えば、初期費用をかなりおさえることもできます。
注意ポイント
家具・什器・照明の購入費は、ほとんどの場合、坪単価には含まれていません。そのため、内装工事費とは別に備品用の予算を用意しておく必要があります。
費用を抑える5つのコツ
1. 中古機器・リースを利用する
厨房機器や什器を中古で購入したり、リースを使ったりすることで、初期費用をおさえられます。
たとえば業務用の冷蔵庫や製氷機は、中古市場で手頃な価格で手に入ることがありますし、リースを使えば一度に大きな出費を避けることができます。
2. 工期に余裕を持たせる
スケジュールにゆとりを持つことで、変更や追加工事による費用の増加を防ぐことができます。
逆に、工期に余裕がないと、急いで資材を用意する必要が出て、高額な代替品を使わざるを得なくなることもあるため注意しましょう。
3. デザインと実用性のバランスを取る
見た目だけでなく、使いやすさや手入れのしやすさにも目を向けることで、長く使える店舗づくりにつながります。たとえば掃除しやすい素材を選べば、日々の手間が減り、メンテナンスのコストをおさえやすくなります。
4. 複数業者から見積もりをとる
複数の業者に同じ条件で見積もりを依頼することで、適正な価格を知ることができます。
業者ごとに見積もりの書き方が違うこともあるため、項目をそろえて比較すると、価格差の理由もはっきり見えてきます。
5. 補助金・助成金を活用する
自治体や国の制度を活用することで、工事費用の一部を補える場合があります。
たとえば「小規模事業者持続化補助金」や「業務改善助成金」など、飲食店の開業やリニューアルに使える制度もありますので、条件に合うものがあれば積極的に活用しましょう。
参考:中小企業庁 小規模事業者持続化補助金
参考:厚生労働省 業務改善助成金
飲食店の内装工事の流れ
内装工事にはいくつかのステップがあり、順番に進めることが大切です。ここでは、開業までの一般的な流れをわかりやすく紹介します。
1. 事前準備

内装工事を始める前に、まずはお店のコンセプトをはっきりさせる必要があります。
どんな雰囲気の店にしたいのか、どんな料理を出すのか、どのようなお客さまをターゲットにするのかを決めることで、内装の方向性が見えてきます。
次に、開業までの流れや予算、必要な設備やスタッフの数などを整理して、事業計画を立てていきます。
また、この段階で出店する物件を選び、契約するところまで進めるのが一般的です。
2. 見積もり~契約
工事を依頼する業者を選ぶときは、複数の会社から見積もりを取る「相見積もり」を行うのが基本です。それぞれの金額や工事内容を比較することで、信頼できる業者を見つけやすくなります。
見積もりをチェックするときは以下の点に注目し、納得できる業者を選びましょう。
■ どんな工事が含まれているか
■ 費用の内訳がしっかり書かれているか
■ 工事の開始日と終わる日が明記されているか
■ 工事後の保証やアフターサービスがあるか
3. 許認可取得と検査対応
飲食店を開くには、必要な許可を取り、いくつかの検査を受ける必要があります。
これらの手続きは、内装工事と並行して進めることになるため、事前にスケジュールを組んでおくことが大切です。
保健所の「食品営業許可」
工事を始める前に設計図を用意し、保健所に相談を行います。設備や間取りがルールに合っているかを確認し、必要があれば設計を見直しましょう。
その後、保健所の担当者と検査の日程を決めて、施設検査を受ける流れとなります。
消防署への届出と検査
店舗の広さや設備の内容によっては、消防署に書類を提出したり、検査を受けたりする必要があります。とくに、ガスコンロなど火を使う厨房機器を設置する場合や、大人数を収容する店では、防火管理者の選任や届出が求められます。
また、店舗の内装が建築基準法に合っているかどうかも重要なポイントです。
建物の使い方を変えたり、増築したりする場合は「建築確認申請」が必要になることがあります。これらの点については、設計段階で専門家に相談しておくと安心です。
4. 施工~引き渡し

内装工事にかかる期間は、お店の広さや工事の内容によって違いがあります。
おおよその目安は以下の通りです。
■ 10〜15坪の小規模店舗:およそ1ヶ月
■ 20〜30坪の中規模店舗:約1.5〜2ヶ月
■ 40坪以上の大規模店舗:約2.5〜3ヶ月
ただし、工事の途中で設備の納品が遅れたり、検査日が変更になったりすることもあります。予定通りに工事が終わらないこともあるため、少し余裕を持ったスケジュールで進めるようにしましょう。
内装業者の選び方と契約の注意点
内装工事を成功させるには、業者選びと契約内容の確認がとても重要です。ここでは、信頼できる業者を選ぶためのポイントと注意すべき契約項目を紹介します。
設計者・施工会社・ワンストップ業者の違いを知ろう
内装工事を依頼する方法には、大きく分けて3つのパターンがあります。
まず、設計と施工を別々の会社に依頼する方法があります。
これは、デザインにしっかりこだわりたいときに向いていますが、その分、工程の調整や管理が複雑になることがあります。
次に、施工会社にデザインもまとめて頼む方法があります。
1社に任せることで打ち合わせがスムーズになりますが、細かいデザインの自由度が下がることもあります。
最後に、設計から工事、アフターサポートまで全部まとめて対応してくれる「ワンストップ業者」という選択肢もあります。手間を省いて効率よく進めたい場合に便利な方法です。
それぞれにメリットとデメリットがありますので、自分の希望に合った方法を選ぶことが大切です。
過去の実績や口コミを確認しよう
業者を選ぶときは、信頼できるかどうかをいろいろな面から確認しましょう。
まずは、これまでに手がけた店舗の実績をチェックしてください。自分が開きたい業種や規模に似た事例があるかを見ると参考になります。
あわせて、インターネットでの口コミや、知り合いからの紹介なども判断材料になります。
対応のよさや工事の仕上がりに満足しているかなどの情報を集めることで、安心して依頼しやすくなります。
また、追加費用が発生したケースについて調べておくことも大切です。見積もりや契約書に不明点がないかを事前に確認しておけば、後からのトラブルも防げるでしょう。
契約時に確認しておきたい主な項目
契約の内容をきちんと決めておくことで、工事中や工事後のトラブルを避けることができます。以下のような項目は、必ず確認しておきましょう。
■ 工事内容の詳細:どこまで工事してもらえるのかを、できるだけ具体的に書いてもらいましょう。たとえば、「壁の塗装は含まれるが看板工事は別」などの違いをはっきりさせることが大切です。
■ 工期(開始日と完了日):いつ工事が始まり、いつ終わる予定かを明記しておくことで、開店準備のスケジュールが立てやすくなります。工事が家賃発生日までに終わらないという事態も防げます。
■ 費用の内訳:「一式」とだけ書かれていると内容が見えづらくなります。材料費・設備費・人件費など、できるだけ細かく分けてもらうことで、他社との比較や金額交渉がしやすくなります。不明な項目があると、後で追加請求される原因にもなるので注意しましょう。
■ 支払い条件(時期と方法):工事の始め、中間、完了時など、いついくら支払うのかをはっきりさせておきましょう。これにより、資金計画を立てやすくなります。
■ 保証内容(保証範囲と期間):工事が終わったあとに不具合があった場合、どこまで対応してもらえるかを事前に確認しておくことも大切です。
■ 変更・追加工事への対応:途中で内容を変更する場合、どのように対応するか(見積もりが出るのか、事前に合意が必要かなど)を決めておくと、予想外の追加費用が発生するのを防げます。
さいごに
飲食店の内装工事は、お店の成功に深く関わる大切な工程です。
費用やスケジュール、必要な手続きについては、事前にしっかり把握しておくことが欠かせません。
とくに初めて開業する方は、信頼できる業者や専門家に相談しながら進めると安心です。
弊社では、これまでに多くの飲食店内装を手がけてきた実績があります。ご質問やご相談があれば、いつでもお気軽にお問い合わせください。

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